第275章

野呂栞は、生まれて初めて――盗人のように胸がざわつく感覚を味わっていた。

島宮奈々未も丹羽光世も、川崎正弘がこのタイミングで戻ってくるとは思っていなかった。しかも運悪く、野呂栞のあの言葉まで耳に入れてしまうなんて。

川崎正弘は玄関口にきっちり三分立ち尽くしてから、ようやく中へ入ってきた。野呂栞には視線すら寄越さない。まっすぐ島宮奈々未と丹羽光世のほうへ歩いていく。

「義姉さん、ボス。おめでとうございます。息子さんが二人も増えたんですから。これは、子どもたちへの気持ちです」

川崎正弘は封筒を二つ取り出した。島宮奈々未は、さすがに受け取りづらそうにする。

「お気遣いありがとうございます...

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